つぶやきの延長線上 second season

映画、アニメーションのこと

2018年 音楽ベスト10 + LIVEベスト10

今年からSpotifyの有料会員になり、これでフィジカル購入量が減り節約バンザイ! と思っていたのだが、結局のところSpotifyで聴いてよかったらフィジカルを購入してしまうルーティンに入り、まったく節約ができなかった2018年でした。

今年はソドム(日本)再発なんかがあり、ギリギリ購入できたりしてよかったなーと。パワーヴァイオレンスだとspazzのCD盤が再発されていましたね。狙ったかのように市場に中古が出回っていましたね。今年のGWくらいからトーキョーに戻ることになり、トーキョーのバンドがたくさん見れていい環境なのですが、地方勢に手が届きにくくなったのでそれはそれで寂しい気持ち。でもやっぱりレコ屋も箱もたくさんあって楽しいね。それのせいで映画全然見れなかったけど…。それと今年は最後にZAY解散とか悲しいことがありましたが、各メンバーそれぞれのさらなる活躍に期待して待つことにしましょうかね。

そんなこんなで年の瀬ということで恒例の音楽ベストです。今年も買ったけど、そこまで聞き込んだ作品が多くなかったので、ベスト作は少ない感じです。最後にLIVEベストも。順不同って感じで来年もよろしくっす。

 

sleepよろしくな東京のインストゥルメンタル・ドゥームバンドのst。正確に言うと昨年末ギリギリに発売されているので今年の音源ではありませんが、まあその辺はテキトーにって感じで。確かにsleepよろしくな反復ドゥームですが、ちょっと和というか、中国の山並みが目に浮かぶようなサウンドが遠くで鳴っている(と錯覚するような)ように聞こえたり面白いバンドだなーと思った。今年の春くらいまでずっとこればっかり聴いてた。

 

傑作『Blooming Maps』から1年という短期間でリリースした4thフル。前作からQ−MHzが楽曲提供しているんですが、今作も同様。前作と比べるとアルバム単位というより楽曲ごとの個性が強い印象を受ける。お気に入りは『カオティック・ラッシュ・ナイト』と『おねがいフューチャー』。それとシングル曲だけど『Swing heart direction』はやっぱりすごい。今年初めてLIVEに足を運んだんですが、上手かったし美人さんでしたね。これからも続けて音楽活動期待してる。(もちろん声優活動も)

 

カオティックハードコアというか激情というべきなのかweeprayの1st。暗く、吐き出しづらいような感情が全体を構成している。発売してから数ヶ月ずっと聴いていたな〜。ブラストビートやトレモロリフなどブラックメタル的アプローチかと思えば、そうではなく「ドゥン」と響くドゥーミーなパートやメロディ部分がブラックメタルのそれらとは違う。久々に小岩で見ることができてよかった。ベースのあたけさんが脱退とのことですが、バンド自体はそのまま継続されるとのこと。その日のLIVEはとても感情が揺れ動かされた。

 

  • Sissy Spacek/Ways of Confusion 

John Wiese率いるグラインド/ノイズユニットの2018年作。これ、みちのくさんが絶賛していたので、Spotifyで聞いたらぶっ飛んだ。それで速攻アナログ買って再生したらさらにぶっ飛んだ。ノイズグラインドっていうか初期カーカスのグチャドロ感を引き継いだゴアグラインド。順不同といいながら今年一枚選べといわれたらコレじゃないでしょうかね。

  

ドローン/アンビエントエレクトロニカ Tim Heckerが東京の雅楽団体と共同作業で制作した2018作。前作があまり好みではなかったのですが、こちらはイントロから完全に掴まれた。今年の来日いけなかったのが残念だったが、また次回作のときにかけつけたいところ。

 

映画『リズと青い鳥』のサントラ。山田尚子絡みであると『聲の形』から引き続いて牛尾憲輔続投となったわけですが、映画にとってなくてはならない存在になった。サントラのみで聴いても「ズレ」がたいへん素晴らしい。聴きながら歩いているとまるで『リズと青い鳥』の世界に入ってしまったかのような感覚に——。

  

  • KUGURIDO/2018DEMO 

姫路のネオクラストKUGURIDOの2018demo。ネオクラストっつーかRAWパンクって感じで大変素晴らしいdemoっす。demoでいちばん聴いた。

 

  • Granule,KLONNS/split Discipline 

www.youtube.com

東京の最前線を突っ走るハードコアパンクGranuleとKLONNSの7インチスプリット!ノイズのまま突っ走り、ドス黒い粒子が身体をマシンガンのように打ちつけてくるようなサウンド。今年のスプリット部門ではCOFFINS,SECOND TO NONEとともによく聴いていた。

 

  • Earthless/Black Heaven 
BLACK HEAVEN

BLACK HEAVEN

 

アメリカのインストゥメンタルロックバンドEarthlessの4th。といっても本作『ブラックヘヴン』からヴォーカルを取り入れた野心作になっている。私的にはヴォーカルなしがアースレスのよさだったと思うので、聴き始めは困惑したのだけどなれるとこれはこれでありだなーといった結果に。サイケ系が好きな人はマストアイテムっす。

 

  • Brainoil/Singularity to Extinction 

今年来日を果たした カルフォルニアの暗黒スラッジコアBrainoilの3rd。暗黒スラッジとクラストのリズムを持っていて大変素晴らしい。スラッジつながりだと来年はEYHATEGODも来日しますしね。スラッジ界隈が盛り上がってくれるといいっすね。

音源ベストはこのような感じで。あとよく聴いたのはこの辺りかな。Scorchedは今年のデスメタルベストじゃないすかね。 

  • Archgoat/The Luciferian Crown
  • SEX MESSIAH/EASTERN CULT OF SODOMY
  • Scorched/Ecliptic Butchery
  • 宇多田ヒカル/初恋
  • Gate/Resurrection Of Relentless God
  • BLACK GANION/Third
  • ENDON/Boy Meets Girl
  • PALM/TO LIVE IS TO DIE, TO DIE IS TO LIVE
  • COFFINS,SECOND TO NONE/Nine Cocoons Of Dens To F
  • ilska/Demon 201H8

 

最後にライヴベストで今年の音楽〆。簡単にコメントします。

  • JESUS PIECE(12/15,渋谷GARRET) 
  • ilska(11/17,小岩Bushbash)
  • CONVULSE(10/28,浅草Gold Sounds)
  • UHONLY GRAVE(10/27,浅草Gold Sounds)
  • Monarch!(10/14,高円寺 二万電圧)
  • Smash Your Face(9/8,新代田FEVER)
  • Second to None(7/28,中野MOONSTEP)
  • COFFINS(7/28,中野MOONSTEP)
  • 坂本真綾(3/10,大阪国際会議場メインホール)
  • 水樹奈々(1/14,日本武道館

JESUS PIECEは今年出した『オンリーセルフ』もよかったですが、LIVEでみるとさらにというかとんでもないバンドで本当にびっくりした。彼ら音楽が本当に大好きのようで他のバンドがLIVEしている間もフロアにいてモッシュかましてた。ヴォーカルのアーロンのモッシュはまじでやばい。COFFINSをめちゃくちゃ楽しそうに聴いててよかったなー。岡山のilska!初めてみたんだけど、これも音源以上に激ヤバ。ギター3人なんだけど、単に音圧だけの問題ではなく3人いてilskaが成立しているかのようなサウンドでよかった。CONVULSEオールドスクールデスメタル!!ニコニコしながらアナログ持っていたらKrueltyのメンバーに1stのB面の1曲目好きっす!といわれながらフライヤーを渡された(笑)UNOHOLY GRAVEは単なるファンですが、東京でRAWグラインド聴けてよかった。グラインド神やっぱやべーなって。Monarch!男女ヴォーカルの音の絡み合いと重低音がカオスな次元に持って行ってくれた。最高。Smash Your Face初めて見たんですが、今年見たLIVEでいちばん楽しかった。second to nonecoffinsはツーマンショー(Krueltyも出ていたのでスリーマンか)でロングセットを堪能。いうことないっすね。完璧。坂本真綾さん単なるファンですが、セトリよかったですし、お綺麗でしたね。水樹奈々はオープニングでいきなりハーレー乗って出てきたのには笑った。谷山紀章さんとのコラボ最高によかった!

 

「アニクリvol.9.0 監督 山田尚子総特集号」への寄稿及び「アニクリvol.6.5 βペンギン・ハイウェイ/文字と映像(序)」への再掲について(冬コミC95)

今年も早いもので師走です。告知ですが「アニクリvol.9.0 監督 山田尚子総特集号」へ『天使にふれるために——山田尚子論』を寄稿しました。

nag-nay.hatenablog.com

山田尚子監督作以外にも参加作品を参照しながら、主題を抽出して書いた作家論になっています。1章では彼女の操る「道具」を媒体としたコミュニケーションに着目し、2章では「触覚的需要」をヒントに、3章では山田尚子に固有の触覚的なモノについて書いております。

作り物であるアニメーションについてどうしてこうも私たちはショックを受けるのか(まるで画面からキャラクターが飛び出してくるように感じるのか)。そんなことを「触覚」をキーワードに論じています。私は『たまこまーけっと』が山田尚子で一番好きな作品なので触れているのは一番多いかと。基本的に前に書いたブログ記事が土台になっています。

paranoid3333333.hatenablog.com

paranoid3333333.hatenablog.com

それと前回「アニクリ6.6」で書いた拙稿(「『続・終物語』は何度も編集される」)が「アニクリ6.5β」に再掲載されるようで、こちらも冬コミで発刊とのことです。

こちらの内容は前回のブログ記事をご確認ください(以下)。ということで告知でした。

paranoid3333333.hatenablog.com

 

 

映画映画ベストテン

毎年恒例となっているワッシュさんのところのベストテン企画へ参加します。今年のテーマは「映画映画ベストテン」とのこと。

d.hatena.ne.jp

 

  1. 教授とわたし、そして映画(ホン・サンス、2010)
  2. カミュなんて知らない柳町光男、2006)
  3. Notre nazi/Unser Nazi(ロバート・クレイマー1984
  4. 心霊玉手匣 其の四(岩澤宏樹、2015)
  5. オリーブの林を抜けて(アッバス・キアロスタミ、1994)
  6. これは映画ではない(ジャファール・パナヒ/モジタバ・ミルタマスブ、2011)
  7. カンヌ映画通り(ダニエル・シュミット、1981)
  8. ほんとうに映した!妖怪カメラ(寺内康太郎、2015)
  9. シテール島への船出(テオ・アンゲロプロス1984
  10. 旧支配者のキャロル(高橋洋、2011)

 

映画映画となるとメタ的な構造が指摘されるわけですが、構造そのものよりも何かが何かへ移行する様子、また、その間で揺れ動くことが魅力だと思う。

このテーマになったときにホンサンスの映画で全て埋められるんではないか? と考えたが、その中でも本テーマにピッタリなのが『教授とわたし、そして映画』でしょうか。チョン・ユミを巡るという短編映画が4回も反復(変奏)される変わった構造。果たして自分が見ているものはなんなのか? と最初は戸惑うかもしれないが、その映画の戸惑いに呑み込まれること間違いなし。

カミュなんて知らないは映画を撮影する大学生たちの舞台裏を撮影しているということで、トリュフォーアメリカの夜』あたりや、アルトマンの『ザ・プレイヤー』あたりを連想するが、その中でもいちばん好きかもしれない。かけておいてよかった生命保険って感じで。それと映画製作の話ということで、『旧支配者のキャロル』も選んでみた。お金に困った監督が、「私を買ってください」って身体を売りに行くシーンがあるんですが、そこがスマートで素晴らしいっす。

クレイマーの『Notre nazi/Unser Nazi』は、トーマス・ハーランの『Wundkanal』という作品の撮影風景をとらえたドキュメンタリー(ルポタージュというべきか)。刑務所から出てきた大量殺人犯を俳優に仕立てるまでの映像が記録されているんだけど、劇伴も不気味で恐ろしい映画。しまいには本人が泣いてしまうのだけど、煽りまくったりキレたりメチャクチャな撮影風景。

心霊ビデオでいえばいくらでも(例えば『コワすぎ』シリーズ)浮かんでくるのだけど、その中でも『心霊玉手匣 其の四』は抜きん出ている。海岸沿いで頭がおかしくなった男性。その海に続く川の上流で学生時代に撮影していた映画で起こった事件について、その川を撮影班と下りながら語っていく。過去/現在/未来、多数の視点が交錯するトンデモない映画。なんとなくシュミットの『デ・ジャ・ヴュ』の感覚に近しいと思っている。また心霊ビデオだと『ほんとうに映した!妖怪カメラ』もいい。普段、心霊映像(『監死カメラ』シリーズ)を撮影している監督が、プロデューサーに妖怪を撮ってこいと放り出されてしまう。ここで面白いのが妖怪はなかなか撮影することができないのに、本テーマではない「心霊」はあっけなく撮影してしまえること。あっけないというよりも「あっ〜いるいる」って感じであり、ありがたみもへったくりもないのである。『テラスハウス クロージングドア』と一緒に見続けていきたい虚構の蠢きが感じられる傑作。

先に書いた何かが何かへ移行する様、そしてそれの揺れ動きというとキアロスタミは忘れてならない。『オリーブの林を抜けて』イラン北部の村に住む青年と、彼が想いを寄せる彼女が俳優として抜擢されるが、現実では彼は振られ続けてしまう。なんとか彼女を自分のものにしようと必死にアレコレと口説き文句をいってみるのだが、それでは彼女もなびかないだろーなんて言葉もでてくる。しかし彼は諦めないし、途中で映画から抜け出てジグザグに歩きながら映画が終わっていく。キアロスタミの映画は『トスカーナの贋作』でもそうですが、何が嘘で何が本当なのかさっぱりわからなくなってくることだ。そういった意味だとキアロスタミの助監督にもなったジャファール・パナヒも嘘のつき方が上手。イランは政治批判の映画を公開してしまうと監督が警察に捕まってしまったりするらしいのですが、パナヒも20年間映画製作を禁じられてしまってしまう。その様子を撮影したのがこれは映画ではない。デジタルヴィデオカメラとiPhoneを使用して作られているが、英語題だと『This is not a film』なんだよね。確かにフィルムではないんだけど、どう見ても映画なんだね。パナヒの自宅(マンションの一室)とエレベーターと、マンション前だけで撮影されているのにこれが面白い。

キアロスタミのしつこさもさることながら、ダニエル・シュミット『カンヌ映画通り』も相当しつこい映画だ。カンヌ国際映画祭に招待されていない主人公が、なんとか映画祭に潜り込もうと潜入する。当然のごとく受付で弾かれてしまうのであるが、それを何度も何度も続ける。さすがに見ているほうもめんどくさくなってくるのだが、このめんどくささがなんとも映画なんじゃないかって気がしてくるのでシュミットはすごい。

フレーム内から自分物がすっと出てくる感覚。アンゲロプロスの『シテール島への船出』もすごい。映画監督は撮影所のそばで花売りをしている老人を俳優にピッタリだと後をつけることになるのだが、鏡越しからすーっと出てくるシーンがすごい。また、老人の後を追っていたらそのまま劇中劇になってしまったり、水たまりをカメラがとらえそこに人影が映ると老人が出現する、というフレーム内フレームの演出がものすごい。キアロスタミとは違った性質だが、アンゲロプロスの映画は平気で時空を超えるし、虚構をまたいで行くところが魅力的だ。

といった感じで10選でした。集計よろしくお願いします。

カミュなんて知らない [DVD]

カミュなんて知らない [DVD]

 
心霊玉手匣4 [DVD]

心霊玉手匣4 [DVD]

 
オリーブの林をぬけて  ニューマスター版 [Blu-ray]

オリーブの林をぬけて ニューマスター版 [Blu-ray]

 
これは映画ではない [DVD]

これは映画ではない [DVD]

 
シテール島への船出 Blu-ray

シテール島への船出 Blu-ray

 
旧支配者のキャロル [DVD]

旧支配者のキャロル [DVD]