つぶやきの延長線上 second season

映画、アニメーション、音楽のこと

神代辰巳『死角関係 隣人夫婦男女四人のからみ合い』(1987)

シネマヴェーラの神代特集で彼の手がけた火サスを見た。ところで火サスといえば先日見たcuntsがオープニングで火カスのテーマソングを使っていたなーと思いつつ、「じゃじゃじゃっじゃーーーーん」と音楽が劇場を流れ始める。そしてもうひとつ思い出すのであれば、SEX MACHINEGUNSの『サスペンス劇場』だろう。曲自体はメタリカよろしくなリフ(ジューダスプリーストでもあるか)にハイトーンボーカルそれにパンサーの超絶ギターソロ。そしてどうでもいいけど、このギャグ線なMV最高でしかない。間奏でのスローモーションが自前スローモーションという…とどうでもいい話をしすぎたので火サスの話に戻るとする。しばらく映画を見ていないとどうでもいいことばかり書いてしまう。しかもそもそもこれはドラマ枠だった。カテゴリーエラー。(以下ネタバレ全開)

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これ、まずすごいのが戸川純が出ているのにやたらとまともな人間に見えることだろう。これが誰が見てもそう思うに違いない。森本レオなんて通常通り、酒井和歌子があまりにもキレすぎている。同じ役者でもこの人と共演してたら本当に殺されるのではないかと思うんじゃないか? 物語はそれこそ安っぽいドラマにありそうなものと同じであり、仲のいい隣人夫婦の一組の内、酒井和歌子の旦那さんが人殺し疑惑で警察に捕まり、そのうちに酒井和歌子が狂ってしまう。森本レオ戸川純は彼女の助けに入るのだけど、実は森本レオが真犯人だった——といったもの。

何がすごいかといえばドラマといった枠内にありながらも、スクリーン内/外が意識され演出されていることだろう。冒頭殺人事件があった現場で捜査し、警察が階段を降りていくと雷が鳴り響く。次のカットで別シーン(酒井和歌子家)に切り替わり、ここではすでに豪雨になっている。夫が殺人事件の重要参考人として、警察に連れて行かれる時もバケツをひっくり返したような雨が降っている。そしてビクビクしながら酒井和歌子が待っていると交番から電話が入り、夫を迎えに外に出かける。彼女が交番にたどり着くと先ほどまでバケツをひっくり返すほどの大雨が降っていたのに、ここではすでに路面も乾いており、何事もなかったかのようである。

これは恐らく室内がスタジオで交番およびその周辺がロケーションによる撮影だったのではないだろうか。そして、この後に酒井和歌子が外に傘をさして干すシーンがインサートされている。画面内で確認できる豪雨は夫が警察に連れて行かれるこのシーンのみであるが、傘を干すシーンはもう一度出てくる。恐らく予算上の関係で豪雨を撮ることが困難だったと推測されるが、その割に雷が鳴るシーンが数度出てくるし、なぜか2回目の傘を干すシーンがインサートされる。冒頭の豪雨は間違いなくこれから起こる不穏な雰囲気の演出。その後も同じような演出には違いないが、酒井和歌子の気の狂い方と順応しているような気がしてならない。壊れていく関係性を予見しているようなシーンであろう。2回目の傘を干すシーンは抜いてもいいかもしれないが、不気味な雰囲気を演出できているので肯定する。

ロマンポルノでは絡みが停滞となってしまうので。神代の映画では絡みのシーンでやたらと登場人物がわけのわからないほどの動きを見せる。ドラマ枠にもかかわらず、酒井和歌子と息子がプロレスをするシーンではとてもびっくりするのであるが、警察署での酒井和歌子の動き方や、森本レオとの対峙シーンなど室内での動線が豊かで。それに、外からありえないほど石を投げられガラスが割れてしまったり、それにブチ切れた酒井和歌子ナチュラルにショットガンを手に取り、外に向かって撃とうするシーンなんかは本当にやばい。やばいけど、雷同様に丁寧に画面の外を意識させる演出だったのだろう。ドラマでも画面の外まで広々と使える。それに新聞記者だ。家の中に入れてくれないと思えば、台所の窓から顔を出したり、勝手に家の中に侵入したり、やりたい放題。さすがにここまでの状況になれば気が狂うのも当たり前かと思うほど。

結末は思った通りというか、これで夫婦間を修復できたらそれもそれで危なくないか? と思うほどなのだが、予想を裏切らないバッドエンドで最高に面白かった。これDVD化されているのだろうか。