つぶやきの延長線上 second season

映画、アニメーションのこと

映画雑記02

各作品ごとに1記事書くのが困難と思うようになってきた。それ以上に映画に対して何かを書くといったことがツイッターの文字数でも難しい。おそらく時間が解決することなんだろうと思いながらキーボードを叩く。ところで何かを書くならキーボードがベストだ。フリック操作で物事を思考して作業があまり向いていない。どちらかというと単純な処理の役割。メモ用途や何も考えないで頭の中のことをさらっとアウトプットすることに長けているんだと思う。それは私が慣れていないだけかもしれないが、キーボードは思考にゆとりを与えてくれる。こいつはいつまでたっても手放せない代物。

この間フォロイーさんが万田の『Unloved』海外盤が10ユーロくらいだよーとおっしゃっていたので、ついポチッとしてしまった。『Unloved』は学生時代に見たきり、ほとんど記憶になかったので再見したかったのだが、渋谷ツタヤ(まだあるのかな)にいって借りるのはめんどくさいし、Kプラスで借りると送料もかかるしなどと億劫になっていたときに10ユーロくらいならありかな〜と思い購入。円換算で送料込みで2,000円ちょいだったかな。

ということで見たのだけど、主題に対して的確なショットの連発。あのアパートの撮影とか、主演が膝から崩れ落ちるホームラン級のショットとかやっぱりすごいなと思った。ただ『SYNCHRONIZER』と同様にどこか苦手な映画だったのも事実。この違和感は自分でもわからないんだけど、『接吻』にはこの違和感がない。なんだろうか? といって考えてもわからないので今度『接吻』を見直そう。

連休中『ヘレディタリー/継承』とか『アンダー・ザ・シルバーレイク』を見たんだけど、これがどちらも面白くなかった。どちらもA24なんだけど、ここの作品は『ア・ゴースト・ストーリー』や『ロブスター』、『グッド・タイム』、『スプリング・ブレイカーズ』、『フロリダ・プロジェクト』(かなり惜しいが)以外は外している印象。文フリで回収したエクリヲでA24特集がされてた。それもあったりして前々から気になっていた『レディ・バード』をアマゾンプライムで見たんだけど、これが当たり。ちょっとやんちゃな女の子の青春映画で物語的にいえばどってこのない、いたってどこにでもありそうな映画だけど、バッサバサ編集で切っていくところが心地いい。ハッとするショット(編集で生まれている)が多数あってよかった。最後も後腐れなく空港から出発して(ここ母親視点だけ)、向こうについたらバーで飲みすぎちゃって飲みすぎでダウン。帰り道に今日は何曜日?って通行人にナチュラルに聞くところや、車の運転シーンが挟まるところがグッときた。

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ヱクリヲ vol.10 特集I 一〇年代ポピュラー文化――「作者」と「キャラクター」のはざまで 特集II A24 インディペンデント映画スタジオの最先端

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  • 作者: 高井くらら,横山タスク,伊藤元晴,山下研,さやわか,西兼志,得地弘基,難波優輝,楊駿驍,横山宏介,堀潤之,小川和キ,伊藤弘了,佐久間義貴,村井厚友,福田正知
  • 出版社/メーカー: エクリヲ編集部
  • 発売日: 2019/05/10
  • メディア: 単行本
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映画雑記01

先日シネスイッチ銀座にてゴダールの『イメージの本』を見てきた。今年はゴダールといいイーストウッドといい高齢映画監督たちの映画が次々に公開されている。『運び屋』は近年のイーストウッドでいちばんよかった。家の中にいるイーストウッドが車の音を聞いて外へ出て行く。そのショット見るだけで映画の息吹を感じたし、ボロボロのイーストウッドとヘリコプターの並走を見るだけで幸せな気持ちにさせてくれるのは流石だ。ただ死ぬとか死なないとか、あのようなかったるいシーンを入れてしまうのはいかがなものだろうか。そんなはずはないと思っていたのだけど。

それでゴダールの話だった。『イメージの本』これは何より楽しい映画だった。エイゼンシュテインとか家が光り輝く中で海岸線を逃げる二人の男女を見て『キッスで殺せ!』やんとか、ラスト付近(というかラスト?)でオフュルスのカメラワークを見て涙が流れてくるとか(あそこでオフュルスずるい!)、ソニマージュじゃんとか編集とか…。前から鳴っているスピーカーがあって、後ろから鳴るのもあったり、上斜めから生っぽい音聞こえたり、楽しい環境下で見れた時間だった。前作もシネスイッチで見たのだけど、あの犬が出てきたので公開時ぶりに再会できた。ゴダールありがとう。

気がついたら平成も終わったらしいが、最後に見たのは積みっぱなしになっていたニコラス・レイの『ビガー・ザン・ライフ 黒の報酬』。ここのところ何かと忙しかったり、メンタル的に疲れる日々を過ごしていてあまり映画を見れていなかったのだけど、ここでニコラスレイを選択して本当によかった。幸せな家庭が精神崩壊からぶち壊れていくといった様を描いているが、それ以上に冒頭の子供たちが授業が終わって駆けていく姿を見て涙が溢れてくる。そこに呼応するのが、夫が病院にいくのに車に乗るシークエンスだよね。柱(ベル)を掴んで離れられない。ここで泣かぬわけがない的な。それと夫が部屋の電気をひとつずつ消していき妻を追い込んでいくシーン絶品。その他にもまるでサイレント黒白映画を見ているかのような陰影使い。とっとと『ラスティ・メン』も棚から出さないとな…と決心。あと森崎東の『夢見通りの人々』も見た。収束していかないことに群像劇のよさがあるんだよね。

ついでに平成映画ってあげておくと…

 

その男、凶暴につき』(北野武、1989)

文学賞殺人事件 大いなる助走』(鈴木則文、1989)

『東京上空いらっしゃいませ』(相米慎二、1990)

『霊のうごめく家(ほんとにあった怖い話 第二夜)』(鶴田法男、1991)

『三月のライオン』(矢崎仁司、1992)

機動警察パトレイバー2 the Movie』(押井守、1993)

学校の怪談』(平山秀幸、1995)

トイレの花子さん』(松岡錠司、1995)

美味しんぼ』(森崎東、1996)

パーフェクトブルー』(今敏、1997)

『TOKYO EYES』(ジャン=ピエール・リモザン、1998)

少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録』(幾原邦彦、1999)

ガメラ3 邪神覚醒』(金子修介、1999)

も〜っと!おジャ魔女どれみ カエル石のひみつ』(山内重保、2001)

『名前のない森(私立探偵濱マイク)』(青山真治、2002)

弁当屋の人妻』(堀禎一、2003)

カナリア』(塩田明彦、2004)

マインド・ゲーム』(湯浅政明、2004)

ONE PIECE THE MOVIE オマツリ男爵と秘密の島』(細田守、2005)

『叫』黒沢清、2006)

『接吻』(万田邦敏、2006)

劇場版CLANNAD』(出崎統、2007)

『彼方からの手紙』(瀬田なつき、2008)

空の境界 矛盾螺旋』(平尾隆之、2008)

マイマイ新子と千年の魔法』(片渕須直、2009)

ゲゲゲの女房』(鈴木卓爾、2010)

『Playback』(三宅唱、2012)

風立ちぬ』(宮崎駿、2013)

邪教(闇動画8)』(児玉和土、2013)

劇場版 魔法少女まどか☆マギカ【新篇】叛逆の物語』(新房昭之、2013)

『夜会VOL.18「橋の下のアルカディア」劇場版』(2014)

『心霊玉手匣4』(岩澤宏樹、2015)

『クニコ(死画像)』(2015)

『ハッピーアワー』(濱口竜介、2015)

『かくれんぼ(ほんとにあった!呪いのビデオ71)』(2017)

リズと青い鳥』(山田尚子、2018)

一応平成なんだからって邦画に当てはめてみたのだけど、じゃあリモザンはなんなんだって感じがあるよね。日本資本も入っているし、何より日本撮影だからいいかなって。悩むのがめんどくさいので一監督一本制度を導入。あれこれ抜けている気がするんだけど、パッと思いつきなのでまた付け足すかも。 

楫野裕『阿吽』

映画というよりも、どこかの部室の片隅に落ちている記録フィルムのような作品だ。8ミリフィルムで撮られた黒白画面は表面上の傷や埃などが、あえてそのまま残してあるような感覚を受ける。そのざらついたイメージが、90年代後半以降の心霊ビデオなどの何か危ういものの感覚と近しい。しかし、物語設定上では3.11以降の出来事を描いているというから驚きだ。まるで10年代の感覚がなく、映像が物語と乖離している。もちろんこれは悪いことでは全くない。こういったズレが映画のひとつの魅力だろう。

傷ついたフィルムの夜に白いシャツの男がひとりたたずむ。ただそれだけで怖いと感じる。女が「かんじくん、かんじくん」と夜ひとりで出歩く彼を探し、電気をつけて、部屋を確認して電気を消す。どこにもいない彼。路上にたたずむ彼。説明描写を最低限に絞るとともに、ショットと次のショットがまるで次元の違う場所を映しているかのような不安定さがこの映画(フィルム)の魅力ではなかろうか。彼が狂った(呪われた)理由が明確に示されないのは描く能力がないのではなく、「怖い」感覚が何が何やらわからないものだから恐怖するからであろう。だからアートなフィルムではなく、心霊ビデオの途中で挿入される恐怖映像の断片的なものが繋がってしまった「怖さ」がこのフィルムの特徴であるといいたい。

そしてもうひとつが都市映画だったということ。少し用法が違うけど『ラブ&ポップ』(1998)などの都市空間の表現方法。そして、アニメ『ブギーポップは笑わない Boogiepop Phantom』(2000)の掴み取りづらい断片的な感覚。特に『ブギポ』からは物語的な側面、オカルトな雰囲気も似ているなと感じた。確かに形式も違うわけなのだが、例えばテレビ『エヴァ』の雰囲気を『serial experiments lain』(1998)もまとっていたようなといえばいいだろうか。何が何だかわからないけど「怖い」感覚。『死画像』(2015)あたりにも通じるような気持ちの悪さがこのフィルムにまとわりついている。

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